le journal des papillons
ラ・レーヴ・デ・パピヨン』の徒然日誌

王子様のご帰館


おかえりなさいませ、ミック様。

カレッジから頻繁に手紙を出されていて、様子はうかがっていましたが
久し振りにお会いしたミック様は、随分と大きくなられたように感じました。
みんなで嬉しく思いました。
でも、多分一番喜んでいたのはアルマンさんだと思います。

だから…
この前アルマンさんの執務室から、ミック様がこっそり出てきたのを
見かけてしまったことは、黙っておきましょう。


ミック様の帰省に合わせて開かれることになったパーティ。
さぁ!張り切って準備しなくちゃ!

厨房からはセシリアさんの焼くクレープの香りが漂い、
どんなお料理が並ぶのか、今から楽しみだわ。

たくさんの方がいらっしゃるとお聞きしたので、
食器も、シルバーも、テーブルクロスも、たくさん用意しなくては。


準備に追われているところへ、リリィ・テイラーから荷物が届きました。
ミシェル様やミック様のお洋服ではないようだけれど…
え?
メイド服が2着も…?
新しいメイドが入るのかしら?
エミリー * comments(0) * trackbacks(0)
ありがとう


朝の光。

やわらかな風。


いつもは心地よく感じる風がとても冷たい。
今までにない冷たい春の風が肩を通るたびに、とても寒くて凍えてしまいそうなの。



パタリと窓を
閉じたら、涙がこぼれる。

こんな日が、いったい何日続いたかしら…。。




ねえレオ。

私達には、こんな道しか無かったの…?


貴方からの手紙と、現実だけがここにあるけれど…
突然すぎて、そして何も出来なくて。


自分の無力さが、貴方を救えない私が、とても哀しい。
せめて幸せに暮らしてくれることを祈るだけ。



そっと立ち上がって、鏡に映る自分と目が合う。


フフ。みんなに心配をかけてしまって…ダメね。
本当にごめんなさい。

でも、今は何もできなくて。


ごめんなさい…ミック。





このまま閉じこもっていても、いけないのはわかっているの。


毎朝欠かさずに、話しに来てくれるアルマン。

そっと様子を見に来てくれている皆。



優しさを感じるたびに、これ以上心配をかける訳にはいかないと思うの。



震える肩をストールで覆い、

ゆっくりと歩いてひとまわり細くなった指を扉にかける…







……ポポポン!


扉を開いて通り抜けると、可愛らしい音とともに開く花。




少し驚いたけれど、見覚えのあるしかけ。


父様の…


そして小さく刻まれた文字。

「Je veux qu'une soeur an・e devienne fin.」




フフっ…あの子が、私を元気づけようと残していってくれたのね。

ありがとう…ミック…


微笑みながら、今まで流していたものとは違う涙がこぼれた。




ごめんなさいね、ミック。
あなたにこんなに心配させてしまうなんて…いけない姉様よね。


今度帰って来た時には、最高の笑顔であなたを迎えるわ。






さあ扉を開けて。
皆に会いにいきましょう。


もう大丈夫…って。











その時、私はまだ知らなかった…よく知った場所からの手紙の存在を。
ミシェル * comments(0) * trackbacks(0)
いってらっしゃいませ


ミック様の、カレッジ行きが正式に決まりました。

この道を決められたのは、ミック様ご自身。


・・・初めてこのお話を聞かされたときは、私・・・

ミシェル様の事や、自分達の事ばかり考えていました。


このパピヨンから離れるなんて、
思いとどまって欲しかったんです。


ミック様は、私達のご主人様ですけれど・・・

やんちゃが盛んないたずらな王子様であり、

ちいさな弟のような存在でもあったんです。



・・・だから忘れていたのかもしれませんね。


マイケル様だって、
いつかは立派な一人前の男性になって
ご自分の人生を、ご自身の足で歩いて行かれる・・・ということ。


「ミック様が安心してここを離れられるように、頑張りましょう」


小間使いのエミリーさんの言葉。

そのとおりだなって思ったんです。


ご主人様が不安で館を離れられない、なんて
あってはならないことですよね!

その言葉で、私達メイドの心は決まったんです。



ミック様、

どうぞ 心おきなく

新しい世界を見てきてくださいね。




ミシェル様のこと・・・

・・・私達におまかせください・・・!
サラ * comments(0) * trackbacks(0)
Daer my sister


もしかしたら、この選択が僕にとって
逃げ道とかじゃなくて先に繋がる通過点だとしたら…


それに当主ったって、
僕は父さまの後をただ継いだだけ。

そんな僕がこの先何が出来るかなんて想像もつかないし、
今、一番向き合わないといけないのは自分自身だと気づいたから。

僕はこの館から離れて、
キングス・カレッジ・オブ・へースティングスへの入学を決めた。


アルマンとの話が済み、僕は部屋に戻る。

あと数日でこの部屋から…
館から居なくなるだと思うと不思議な気持ちになる。


身の回りの荷物は殆どメイド達がトランクにまとめてくれた。
後は僕の手持ちの荷物だけ。

ペンと手帳に、いつも読む本に、
写真立てに入った、小さい頃の最後の家族写真…


悪戯に引っ掛かる叫び声も
廊下を駆け出していく音も
追い回してくる執事の声も
それが途絶える日なんてなかった。


僕が出て行く事になったらきっと、
凄く静かになるんだろうなぁ…

そういえば、姉さまはそんな僕の悪戯話ををいつも楽しみに聞いてたっけ。


…うん、決めたっ!
今の僕に出来る事、それは…

ミック * comments(0) * trackbacks(0)
新しい扉


再び 静かになった お屋敷。
しん、と静まり返った空気のなかに居ると
ふいに物思いに耽ってしまいがちです。
メイド達もみな、パピヨンの行く末…
ミック様とミシェル様のことを案じて、
それぞれに思いを巡らせているよう…


この数ヶ月の間…
めまぐるしく 色々なことがありました。

レオ様、ミシェル様のこと…
ご婚約の破談のこと…


あまりにも急展開すぎて
戸惑うメイド達も多い中――

ミック坊ちゃま…いえ、ミック様は
きちんと、ご自分とミシェル様のことを考えていました。

時折遠くを見つめるその横顔が
いつの間にかとても大人びていたことに
私ははっとしました。


先日アルマンさんより全使用人に明かされたこと。

それは、このラ・レーヴ・デ・パピヨンを離れ、
ミック様お一人で、全寮制のカレッジへ進まれる
という驚きの内容でした。

しかもそれは、ミック様たってのご希望とのこと…


旅立ちを決意されたミック様。
私達は、そのお気持ちを大切にして差し上げなくては。

私だって、ミシェル様の今のご様子を見ると
心が痛むわ。
ミック様まで傍に居なくなったらどうなるか…
とても心配よ。

でも…こんな時だからこそ
ミック様がせっかく決断されたことを
私達が邪魔してはいけないと思うの。

そして、ミック様が前に進むことで
ミシェル様もきっと元気になってくださると思うの…



「私も、そう思います」
私の話を聞いていたニーナが、立ち上がって言いました。

「私達は、ミック様が安心してここを離れられるように、頑張りましょう」

ええ。
私達の願いはきっとみんな同じ。

どうか、ミック様とミシェル様が幸せでありますように。
エミリー * comments(0) * trackbacks(0)